異例ずくめのトランプ米大統領の観戦は、通常と違う騒然とした館内で「大相撲」という日本の伝統文化が大統領にきちんと伝わったのか、疑問だった。
大相撲は、単なる大男のぶつかり合いではない。まげを結った力士と勝負だけでなく周辺の存在全てが、日本文化の伝承だ。足を踏み入れれば、様々なしきたり、様式美がある。その空気感が独特の味わいを醸し出している。
大統領と安倍首相の両夫妻は、普段なら安座で使う升席で、4人用の囲みを壊して特別に椅子を設置し、座った。明らかに警護要員と分かる服装の人たちを含めて周辺の席や通路は満杯だった。見た目は一般のファンと変わらぬ私服の人たちも多かったが、歓声や拍手が少ない。警護関係者が多数交じっていたのかもしれない。
当初、相撲協会は皇族や要人を招く、2階で椅子に座る貴賓席を提案したという。好角家だった昭和天皇のご希望に応え、十分な警備が出来るとして、当時の春日野理事長(元横綱栃錦)が国技館に整えた。
しかし、米側の希望か、日本政府の忖度(そんたく)か、今回は異例の形に決まった。取組を観戦したのは終わりから5番。優勝した朝乃山の一番から席に着いた。だが、多くの勝負に一喜一憂した過去の皇族や要人らとは雰囲気が違った。観戦する大統領からは手持ち無沙汰感も伝わってくる。「力士らへの拍手も少ないし、国技が政治利用されている」と違和感を覚えたのは私だけだろうか。
大相撲の魅力を知ることは、日本を知ることにつながる。もし、次の機会があるなら、大統領には伝統文化のしきたりにのっとっての観戦をお願いしたい。普段着の大相撲の深い味わいを堪能して欲しいからだ。(竹園隆浩)
アサデジより転写
NHKへ、、、https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190527/k10011930551000.html?utm_int=news_contents_news-main_001