本日国の人……… 長州心臓の助は………
15日に県内各地で行われる「精霊(しょうろう)流し」。昨年、88歳で亡くなった長崎原爆被災者協議会(被災協)の前会長、谷口稜曄(すみてる)さんも初盆を迎え、家族らが精霊船の準備を進めている。平和への思いを受け継いでいきたい――。そんな思いを込めて、船をひく。
「きれいに付けんばね」「これはどこがいいやろ」
11日の昼。うだるような暑さの中、長崎市内の谷口さんの自宅前で家族や被災協のメンバーらが、長さ8メートル超の精霊船にたくさんの千羽鶴を飾り付けた。船は親族や町内会の人たちの力を借りた手作りで、屋根には針金で作った鶴を飾り、印(しるし)灯籠(とうろう)にも折り鶴のデザインをあしらった。
「ひっそりと、と思っていたけど、どんどん大きくなってしまってね」。長男の英夫さん(58)や長女の寺坂澄江さん(61)がそう言って笑う。船の正面に飾られた写真には、たばこやマージャンが好きで、家族にとって「頑固な普通のおやじ」が、にっこりとほほ笑む姿が納まる。英夫さんは「2年前に亡くなった母と、一緒に手を携えて帰ってきてくれればいいな」。
やけどを負った自身の背中の写真を手に、被爆の悲惨さと核廃絶を訴え続けた谷口さん。飾り付けられた千羽鶴は、谷口さんが講話をした修学旅行生から受け取ったものなどだ。自宅で大切に保管され、中には30年ほど前にもらったものもあるという。
「とにかく平和への思いがこもった船。できるだけみんなで送り出したい」と被災協事務局長の柿田富美枝さん(64)。「長崎被災協・被爆二世の会・長崎」の会長、佐藤直子さん(54)は「亡くなったのがついこの間のよう。遺志をしっかり受け継いで2世もがんばっていくので、これからも見守ってください。そんな思いを込めて飾り付けました」と話した。(田中瞳子)