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【 国有地 】は 『 國民 』の モノ!!!ですよねぇ〜 〜

 朝日新聞がかつてつくっていた自前の放送番組朝日ニュースター」以来、わたしはネットによるニュース番組づくりに加わってきたが、この4月からは「デモクラシータイムス」という市民ニュースネットを仲間とともに立ち上げることになる。それを支援してくださる市民の一人、70代のMさんは、1946年(昭和21年)、敗戦の翌年に小学校に入学したそうである。

 「小学校には、奉安殿というのがあって、そこに両陛下のご真影と教育勅語が納められていたんですよ。アメリカの占領軍もきたばかりですから、まだ撤去されていなかったんですよ」

 そうだろうな、明治以来の「天皇の国」から「国民主権の国」に変わる日本国憲法が施行されるのは1947年5月だから、その間は新旧いろんなものが混在していたんだろうな、奉安殿も急に撤去すべきものかどうか迷ったのかもしれないな、で、小学1年生のMさんも奉安殿を参拝したそうである。

 「ところで、教育勅語を読んだことありますか」とMさん。

 ええ、近代史の勉強で目を通したことはありますよ。「朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ……」という書き出しで天皇制国家であることを高らかに宣言、そして「爾臣民ハ父母ニ孝ニ……」「夫婦相和シ……」など日本人の守るべき徳目が並んでいたな。個人の大切さよりも国家への貢献をうたいあげる教育勅語、戦前の軍国主義を支える精神的基盤ともなったのだが、それを、例の、法外な安値で国有地の払い下げを受けた大阪市森友学園の幼稚園児たちが口をそろえて暗唱する、昔の日本と見紛う異様な場面がテレビで流されたから、にわかに「教育勅語」が時の話題となっているわけである。

 「その教育勅語の最後に日付があるんですよ、ご存じ?」

 ほう、それは知らなかったな。「明治二十三年十月三十日 御名御璽」。なるほど、昔の大日本帝国憲法が施行されたのと同じ年である。Mさん、「実は、私は10月30日生まれなものですから、おまえは教育勅語だといわれていたんです」。そんなMさんがいまはデモクラシーのアクティブシニアなのだから、戦後70年の時代変革はつくづく大切な歳月だったんだなと思うのである。

■なんだか芸がこまかい

 さて、「教育勅語」を幼児に暗唱させ、朗唱させる森友学園、払い下げてもらった国有地に小学校を建てているところだった。で、その国有地、鑑定では9億円以上もするところを、地中にゴミが埋まっているとかでその撤去費用をおよそ8億円と見積もり、森友学園は差し引き1億円ちょっとで手に入れたというのが大まかな問題の構図である。おいおい、ほんとかね、ずいぶん気前よくおまけするんだね、なにかあやしい政治的癒着があるんじゃないか? だれしも思う疑問から、このごろ連日、朝から深夜までテレビで微に入り細に入り報道しているから、あまり細部には立ちいらない。

 大騒ぎになったのは、学園の理事長、籠池泰典氏の妻が安倍晋三首相の夫人昭恵さんとひんぱんにメールをかわす間柄で、なんと、彼女を名誉校長に任じ、国有地の借り受けや買い取りについても相談していたみたいなことを籠池氏側が言うからである。国有地の売買といえば、管轄は財務省、その出先の近畿財務局が籠池氏と連絡、接触して、この売買をまとめたわけだが、なんで地中のゴミをさらいだすのにポンと8億円もはずむのか。そりゃ、安倍昭恵さんが名誉校長ということならば、籠池氏のバックには安倍首相もいるのかもしれない、それじゃあ国有地をできるだけ安くサービスしなくちゃいけないかもねとお役所側が先回りして考える、つまり「忖度(そんたく)」して、こういう仕儀になったというストーリーが浮かぶ。

 のちに籠池氏が証人喚問に呼び出され、「神風が吹いたと思った。見えない力が動いたのではないかと思った」と思わせぶりなことをしゃべるから、「忖度」という言葉がテレビでさかんに飛び交うことになる。そんな言葉、耳慣れない人も多かっただろう。

 わたしも1970年代から政治記者として働いてきて、ロッキード事件やダグラス・グラマン事件、リクルート事件など数々の大型疑獄事件に立ち会ってきた。ロッキード事件では、田中角栄元首相が5億円の収賄容疑で逮捕された朝、国会近くの田中事務所への検察のガサ入れにかけつけた。ダグラス・グラマン事件では、松野頼三衆院議員が国会の証人喚問で「5億円受け取った」と証言した場面もじかに見て聞いた。いずれも、米航空メーカーの日本の航空会社への売り込み、商社の頼みで口利きしたというものである。大物政治家の絡む政治事件ストーリー、われわれ取材陣もおおいに怒って必死に取材したものだった。

 さて、そんなころの事件と比べると、今回の国有地払い下げ事件は、「ゴミ撤去代金」とか「忖度」とか、過去のすごい事件と比べて、なんだか芸がこまかい。チマチマしているようにも見える。だが、待てよ、そこで考えなくちゃいけない。ロッキードもダグラス・グラマンも、民間会社の取引に便乗して賄賂をせしめるというものである。しかし、「国有地」は、国民みんなのものである。それを何だか「ゴミ撤去」などと腑(ふ)に落ちない理由でやたら安売りしていいのか。そんなあやしい状況で、そこに学校を建てるということ、そこで将来の国民を育てるというまことにたいせつな公的な施設づくりをしていいのかどうか。しかも「ゴミ撤去」などといういかにも手の込んだ名目による値引き、何だか価格操作のようにみえる。

■なかなかの曲者

 「元国有地に教育施設」という事業を、そんなあやしげな取引でやってしまっていいのかどうか。国の資産運用に絡んでひと稼ぎという人たちは、少なからずいるのであろう。しかし、その学園で「教育勅語」をたいせつなものとして学んでいるのだとすれば、「見えない力」でできてしまうなんてのは、いかにもそぐわない。わたし自身は「教育勅語」の理念には賛同しない立場ながら、その精神を欲得でけがすことにならないか、そんな心配をしないのか、ひとごとながら気になる。右翼的思想の人たちも利にはさといんだなあ、と。

 それにしても、ほかならぬ安倍さん夫妻が妙な人たちと絡んでいるんだなあという思いも拭いきれない。昭恵夫人は、籠池氏らの「教育勅語」を重んずる教育に賛同して、名誉校長まで引き受けたわけである。さすがにこんな事態になって、名誉校長は辞め、安倍首相も、はじめは肯定的にみえたけれど、そのうち、籠池氏たちを「しつこい人」と表現したりした。安倍首相は、自身も夫人も、森友学園の国有地入手に絡んでいるならば、「首相も国会議員も辞める」と国会で明言してしまったから、野党にすれば格好の標的、いわば「森友学園政局」になってしまったわけである。

 3月23日の衆参両院での籠池氏への証人喚問は、籠池氏にしゃべるだけしゃべらせて、この問題に決着をつけようとしたものだろう。しかし、籠池氏はなかなかの曲者といっていい。籠池氏は、昭恵夫人の秘書の役をしている女性の政府職員が財務省の「国有財産審理室長」に国有地の扱いについて問い合わせてくれたという受信ファクスを披露し、えっ、そんなに深い関係なのかと印象付けた。さかのぼって2015年9月5日、昭恵夫人が森友学園に講演に来た際、同行のお付きを外して「どうぞ安倍晋三からです」と100万円をもらったという話も飛び出した。それ、ほんとなの、にわかには信じがたいが、証人喚問はうそをつけば刑事罰が科される。安倍夫妻は、そんなのはみんなうそと否定、夫妻側からは、昭恵夫人と籠池夫人がやりとりした83通に及ぶメールを公開した。ほら、ちゃんと一線は画しているでしょ、と。いやはや、往時の疑獄事件とは、ずいぶん様相が違うなあ!

 その昔のこの種の事件は、人と人、じかにひそかに会って密談して腹芸で取引したものだが、いまどきはファクスやらメールやら、みんなパソコンの中に入っているから、いったん談合が破裂すれば、なにもかもあばきだされることにもなる。まあ、ここまでくれば、だいたいはわかった、昭恵さん側と籠池氏側、それぞれ勝手に責任の押し付け合いをしていれば、という気分にもなる。

 ただ、国会もメディアもだいじなことを忘れてはいけない、こんなていたらくで日本の教育がどのように培われていくのか、こどもたちが育っていくのか、時代錯誤の教育勅語復活と国有地利権が絡み合うようないかがわしさにどう立ち向かうのか、そこが問題である。安倍さんはわかっているのか、稲田朋美防衛相は国会答弁で、「教育勅語も中身はいい」みたいに聞こえる発言をしていたが、聞き捨てならない話である。(早野透=元朝日新聞コラムニスト・桜美林大学名誉教授)

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写真説明は 此処を!!!



アサデジより!!!


by tomoyoshikatsu | 2017-03-30 12:50 | 政治