政府は原発の使用済み核燃料をすべて再処理してプルトニウムを取り出す「全量再処理」を、電力会社に義務づけている。プルトニウムを使うあてがないのに政策を変えなかったのだから当然、膨大な余剰プルトニウムを抱える事態に陥った。「在庫」は原爆6千発分。異常な事態である。
政府は現実を直視し、速やかに全量再処理路線からの撤退を考えるべきだ。
原子力委員会は今回、全量再処理路線に触れず、再処理する量に制限を設けて余剰プルトニウムの削減を目指すというが、実効性は疑わしい。
プルトニウム消費にいま唯一有効な手段は、ふつうの原発で燃やす「プルサーマル」。しかし、その将来は見通せない。東京電力福島第一原発事故前に54基あった国内の原発のうち、すでに19基の廃炉が決まり、再稼働は9基にとどまる。
プルサーマルが政府の計画通りに進まなければ、建設中の六ケ所再処理工場(青森県)は完成してもフル稼働できず、使用済み核燃料が再処理される見通しが立たないまま国内にたまり続けることになる。
全量再処理はそもそも、抽出したプルトニウムを専用に使う高速増殖炉の実現を前提にした政策だ。ウランの市場価格の低迷もあって、巨費を投じてプルトニウムを抽出する再処理の意義も失われている。
再処理費用は電力会社が負担し、結果的に、電気料金にはね返る。将来を見通せない中で全量再処理を続ければ、日本は国際的な批判にさらされ続け、国民の負担も増すばかりだ。(編集委員・上田俊英)