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ドイツ 核廃棄物 地下1,000M


写真は ココから

 ドイツ中部にある街のはずれで今、原発から出される放射性の廃棄物の最終処分場の建設が進んでいる。地下約1千メートルの世界にアリの巣のように張り巡らされたトンネルを11月中旬に訪ねた。そこは南国のように暑かった。

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 ニーダーザクセン州ザルツギッターにあるコンラート最終処分場。地底へと続く高速エレベーターの入り口は、小麦やジャガイモ畑が延々と広がる大地のど真ん中にあった。かつては鉄鉱石の採掘場だったところだ。入り口を覆うようにして立つのは、作業員たちが憩う簡素な建物。スキー場のロッジのような風情だ。

 「見学者の申し込みが多く、いまは3カ月待ちの状態です。近く日本の政府関係者の方もお見えになります」。案内役で地質学者のアルトゥア・ユンケルトさんが迎えてくれた。

 直前に、近くの情報センターで全体の見取り図をみて回った。地下深くに、作業用の車が通る坑道が何層にもわたって通っている。かつて鉄鉱石を掘った所とは異なる場所に、袋小路の水平のトンネルをいくつも建設中だ。ひとつの長さは数百メートルから1キロほど。そこにコンテナに積んだ廃棄物を押し込み、50メートルずつ壁で区切ってセメントで空間を埋め固めていくという構想だ。運び込まれるのは、廃炉の過程で生じる構造物など、中低レベルの放射線廃棄物。この国ですべての原発が止まる2022年からの運用を目指している。

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 専用の作業着に着替えて、いざ地中へ。緊急時に使うショルダーバッグのような空気ボンベを持たされ、発信器付きのヘルメットもかぶる。目に異物が入るのを防ぐため、スキーのゴーグルのようなものも身につける。今年も事故で1人が亡くなっていると聞き、緊張が高まる。

 エレベーターはデパートのそれと違って、まるで鳥かごのようだ。作業員約20人と一緒に乗り込むドアが閉まり、ゆっくりと加速。暗闇と沈黙の中で「地に落ちていく」感覚を味わう。約5分後、ドアが開くと、蛍光灯に照らされた坑道が姿を現した。「地下3階、1千メートル」と書かれた看板が目に入る。

 ここから、小型トラックにのり、処分場のトンネルに向かう。すれ違う作業員たちから、「グリュック アオフ!」(幸運を)。と言葉をかけられる。「また地上で会えるように」という意味もあるそうだ。

 途中、説明を聞くために小路に入ると、汗が噴き出す。地上は零度近い気温なのと対照的だ。

 「100メートル下るごとに気温は3度あがります。坑道内では機械を使って空気を循環させていますが、袋小路に入ると風が届きません」とユンケルトさん。下着のシャツはびっしょりだ。

 大型ショベルを使った工事現場をいくつか通り過ぎた後、坑道に比べてやや狭い感じのするトンネルの入り口にたどり着いた。「ここが廃棄物のコンテナが積まれていく場所です」。高さ6メートル、幅は7メートルほど。数百メートル先で左にカーブしていて、奥までは見通すことはできない。辺り一帯の地層は鉄鉱石が交じった岩石と粘土で、岩肌には落石防止用の網がかけられている。

 見た目はなんてことがないトンネルだが、これから永久に廃棄物が置かれ続けることを思うと、地球に申し訳ない気がしてくる。将来、地震があったら、どうするんだろう。コンクリートは老朽化して割れないのだろうか。何より畑のど真ん中の地下にある処分場の存在を、後世にどうやって伝えていくのだろう。さまざまな疑問も湧いてきた。

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 地上に引き返し、食堂で昼食を囲みながら、ユンケルトさんと、同僚のクリスチィアン・イスリンガーさんに話を聞いた。

 記者「なぜこの場所が選ばれたのですか?」

 ユンケルトさん「南西部のライン川周辺は、かつて火山活動があったので対象からはずされたのです。地殻プレートがある場所も対象外。地質調査の結果、この場所では過去数百万年にわたって目立った地震がなかったことが分かっています。外部から流入する地下水もありません」

 記者「放射性廃棄物が入ったコンテナや密封するセメントは腐食しないのでしょうか?」

 ユンケルトさん「コンテナやセメントではなく、地層そのものによって安全が確保されていると考えてください」

 記者「放射性廃棄物の危険性がなくなるまで、どれくらいかかるのですか?」

 ユンケルトさん「ここに運び込まれるのは、中低レベルの廃棄物です。100年後には放射線量は当初の5%にまで下がりますが、周辺の地層と同じレベルになるまでには100万年を要すると考えています。高レベル廃棄物の最終処分場についてはまだ候補地が決まっていません」

 記者「人里離れたこの場所に放射性廃棄物が埋まっているということを何万年にもわたって、どうやって後世に伝えていくのでしょうか?」

 ユンケルトさん「いまはまだ、その解決策が見つかっていません。ドイツの問題というよりは、現在、国際原子力機関IAEA)でどういう方法があるのか検討しているところです」

 イスリンガーさん「いつの日にか、放射性廃棄物だけ残したまま、人類がこの地上から消え失せていることも想定しなければなりません。新たな氷河期が来るかもしれませんし、大洪水もありえます。そのことも前提にしたうえで対策を検討しなければならないのです」

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 気の遠くなるよう話に、めまいがするようだ。日本でも、地震や津波を予期できなかった言い訳として「想定外」という言葉が使われたのを思い出す。「人類が消え失せた後も」と言われても、その言葉が責任感の強さを表しているのか、それとも英知の限界を吐露しているのか。疑問はすっきりしないまま帰路についた。

 帰り際、建設の反対を訴えるプラカードを2、3枚見かけた。過去には裁判でも争われたが、いずれも原告が敗訴した。一方、地元には協力の見返りとして国から年間70万ユーロ(約9千万円)が支払われている。

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 高野弦(たかの・ゆづる) ベルリン支局長。1992年に朝日新聞社入社。東京経済部、アジア総局員(バンコク)、ニューデリー支局員、経済部デスク、国際報道部デスク、同部長代理などを経て、2016年8月から現職。51歳。

25日……09:45・・・!!!
今のところ 暖かいですけど この後!?!?、、、、、

by tomoyoshikatsu | 2017-12-27 04:42 | 脱原発