戦争を語る 国境なき医師団 白川 優子 さん

(戦争を語る:1)激戦地に立って 国境なき医師団の看護師・白川優子さん


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 世界の激戦地にばかり派遣され、人道支援に奔走する日本人がいる。戦争や天災など医療が必要な地域にスタッフを派遣する国際NGO「国境なき医師団(MSF)」の看護師、白川優子さん(43)。今はシリア北部ラッカ近郊で活動中だ。現代の戦争の悲劇を間近で見続け、平和を保ち続けることの大切さを日本社会にも訴えるログイン前の続き

 ――過激派組織「イスラム国」(IS)が最大拠点としたイラク北部モスルで今年6~7月、緊急医療支援を行いました。

 「病院に銃弾や爆発で傷ついた人、IS戦闘員の自爆攻撃に巻き込まれた人が次々と運ばれてきました。手術室の看護師長として技術の指導をし、多い日には10件の手術に立ち会いました。約4キロ離れた旧市街の前線の爆発の煙が見え、砲撃音が聞こえました」

 「イラク人の患者だけでなく、医師も看護師も誰もが3年にわたるIS支配の被害者でした。みんなが親しい誰かを亡くし、恐怖を感じ、傷ついたからこそ、患者の痛みがよく分かる。ある日、ISの戦闘員の子どもが運ばれてきました。外国出身の両親が自爆テロで死亡し、幼児も手足をやけどしていました。多くのイラク人にとってISは憎しみの対象なのに、言葉も通じず怖がる幼児に、『子どもには罪が無い』と愛情を持って接していました。公平に医療を行う病院としては当然ですが、私は涙をこらえられませんでした」

 ――2012年と13年に3カ月ずつ活動したシリアでは、病院も危険にさらされています。

 「アサド政権はMSFの国内での活動を認めていないため、シリア北部の反体制派支配地域に周辺国から入りました。非正規に入るしかなく、医療活動自体が命がけです。MSFのジャケットも着られず、看板も立てられない。それでも、たくさんの患者がうわさを聞きつけ、やって来ました。ある日、病院の上空を政権軍の航空機が旋回し、近くに弾を6発落としました。ものすごい震動で、死ぬかと思ったけれど、医師は患者の手術を止めませんでした」

 ――12~16年に計4回派遣されたイエメンはどうでしたか。

 「12年、内戦下のイエメンでは、米国などがテロリスト掃討作戦として無人機で空爆していました。(国際テロ組織)アルカイダ系武装組織の幹部が殺されたとき、攻撃側はお祭り騒ぎでしたが、その陰で多くの市民が深い傷を負いました。内臓が出ていたり、手足がもぎ取られたりしていました」

 「今の戦争は、サウジアラビアとイランの『代理戦争』とも言われていますが、一般市民は大変な貧困に苦しんでいます。お風呂に入れず、服もボロボロ。栄養失調が深刻で、けがを治療しても、なかなか治りません。シリアイラクと違って、国際社会に注目されず、援助も足りない。戦争が終わる兆しすら見えません」

     ■     ■

 ――南スーダンでは戦争を一番身近に感じたそうですね。

 「14年2月、北部マラカルに入ると、突然、戦争が始まりました。早朝から砲撃音がずっと続き、国連の敷地内に逃れて、防空壕(ごう)を出たり入ったり。50度を超す気温の中、ビスケットや缶詰を食べ、ナイル川の水に塩素を入れて飲んだ。たくさんのけが人が運ばれてきて、どんどん亡くなります。遺体をバッグに入れて、せめて日付と性別と推定年齢を書きました」

 「約2週間で砲撃音が止まり、空港も開放されたけど、街中の病院に残された患者の確認に向かいました。国連の敷地から出た瞬間に目にしたものは遺体、遺体、遺体。でも、危険を覚悟して行って良かった。生きている患者がいたんです。毎日行って90人以上救出した。南スーダンで戦争は一瞬で始まり、何万人もが難民になり、亡くなるという現実を見ました」

 ――16年に活動したパレスチナ自治区ガザは、イスラエルなどに周囲を封鎖され、「天井のない監獄」とも呼ばれています。

 「世界一巨大な『監獄』というのは本当にその通り。私自身、4カ月でも閉じ込められている閉塞(へいそく)感がありましたが、ガザの人たちはずっと続きます。傷ついているのだけれど、明るくて、人間らしく生きていこうとしていた。今回のモスルでもシリアでも、例えば病棟で傷ついて絶望している中でも歌ってみたりとか、ジョークを言ってみたりとか、どうにか人間らしく生きようとする姿はどこの紛争地でも共通しています」

     ■     ■

 ――現代の戦争を間近で見続けて、何を感じますか。

 「どこの紛争地でも被害者の多くは、戦争に全く加担していない、罪の無い一般市民です。戦争やテロを憎み、家族を愛し、平和を願う人たちばかりです。昔のような国と国の戦争ではなく、『対テロ戦争』が増えています。テロ掃討のために武力行使をすると、テロに全く関係のない市民が巻き込まれ、攻撃をした相手に憎悪を抱くようになります」

 「いま、世界では戦争しか知らない子どもたちが増えています。モスルでは3年間、学校教育ができなくなり、イエメンでもシリアでも教育は崩壊してしまいました。学校が避難民の暮らす場所になったりする。算数や国語だけでなく、人間として生きる力とか、道徳的なことも習わなければいけないのに、見るものは戦争や憎しみばかり。紛争地には親を亡くし、家をなくした子どもがたくさんいます。恨みや怒りだけを持ち続けて育てば、テロリストになってしまってもおかしくない。憎悪や暴力の連鎖を止めるために教育や心のケアが大事と思うのです。その意味ではISの戦闘員はひどいことをしたけれど、やはり人間として見なければいけません」

 ――紛争地で活動を続ける原動力は何ですか。

 「紛争地を選んでいるわけではありませんが、派遣要請があれば行きます。最近は私なりに意義を見いだせています。まず紛争地では医療が絶対に必要で、行けば必ず人道援助につながる。でも、医療者は不足している。自分の国とか遠い国とかではなく、同じ人間が苦しんでいる中で、私は行けると思ってしまうんです」

 「医療だけでなく、遠くから来たと伝えるだけでも意味があります。人間と人間の交流を大切にし、特に子どもは抱きしめたり、手を握ったりします。国や宗教の違いから戦争になっているかもしれないけれど、外国から救済に来ている人もいることを知ってほしい。次の戦争を生み出さないように、恨みや怒りの気持ちを持たないように接してあげたいのです」

 ――ジャーナリストへの転向を考えたこともあったそうですね。

 「シリアで活動中、空爆が止まらず、助けても助けても瀕死(ひんし)の患者が運ばれてくる。戦争を止めるためにはジャーナリストになって、現実を伝えなければと決心した。でも、親しい記者に打ち明けると、『看護師なら現場で命を救い続けなさい』と。本当に良かった。看護師だから出会えた人たちや、細部にまで入り込んで伝えられることがあると今は思います」

 ――今の活動のきっかけは。

 「MSFは7歳のときにたまたまテレビで見て知りました。『はだしのゲン』『ビルマの竪琴』といった作品を夢中になって読みました。戦争に巻き込まれた一般市民だけでなく、自分の意思に反して戦争に駆り出されていった兵士のことも思い、心を痛めました」

 「戦争は悲劇しか生み出さないと本を読んで思ったけど、実際の現場は本当にその通りでした。命が助かったから良かったではなく、絶望を抱えて生きる人が大勢います。手術をして助かったけれど、歩けるようになるまでのリハビリや精神的なケアには時間がかかるし、家を失った人たちは再建が必要です。モスルにしても、解放作戦が終わると、あまり報道されなくなりましたが、人々の闘いはこれからが始まりです」

     ■     ■

 ――日本人にとって戦争は「ひとごと」でしょうか。

 「私も少し前までひとごとと思っていました。戦争はおじいちゃんとおばあちゃんの時代の話で、戦後の日本は戦争を放棄したし、憲法9条があるし、平和な国と思っていました。でも、長い間、平和だったシリアはあっという間に内戦になりました。戦争はある日、突然、始まってしまうものです。日本は戦争をしてこなかったことは事実ですが、この平和をどう保ち続けられるかを考えなければなりません。日本は戦争を放棄するだけじゃなく、絶対に加担してはいけない国。間接的でも加担する国になろうとすれば、私は堂々と反対の声をあげられる国民になりたい。戦争って本当にひどいものですから」(聞き手・渡辺丘)

     *

 しらかわゆうこ 1973年生まれ。日本で7年看護師を務めた後、豪カトリック大看護科卒。2010年に国境なき医師団に参加。9カ国・地域に15回派遣された。

     ◇

 戦後72年の夏。今も、戦禍は繰り返されている。現代と過去の戦争を、4人が語る。次回は戦争孤児の会代表の金田茉莉さん。

アサデジより 転写

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明日は 戦争孤児 ……… 予約投稿しています

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Commented at 2017-08-13 11:36 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2017-08-13 16:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by tomoyoshikatsu at 2017-08-13 19:13
上の コメント ありがとうございます

そう………ですねぇ〜 !!!
Commented by tomoyoshikatsu at 2017-08-13 19:14
下の 方 コメントありがとうございます

そうですね〜
Commented by ホワイトリバー at 2017-08-13 22:46 x
題名が「国境なき記者団」となっていますが、「国境なき医師団」ですね
Commented by tomoyoshikatsu at 2017-08-14 04:45
ホワイトリバー さん コメント ありがとうございます

全く 気づきませんでした………
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by tomoyoshikatsu | 2017-08-13 10:00 | 平和 | Trackback | Comments(6)